
「忘れる」方を得意とする脳の性質を知った上で、ではどうしたら脳に必要なことを長時間定着させることができるのでしょうか?
科学的見地から見て、脳が記憶できるものは以下の二種類があります。
1.感情が絡んだ出来事
2.本人が覚えようと意識したもの
この二つが脳に記憶として定着する理由は、その記憶が生命にとって必要であると脳が判断するからです。
脳は普段から大量のエネルギーを消費します。体全体のエネルギーの約25%もの量を使用しているのです。
したがって脳は、エネルギーの無駄を出来るだけ排除するため必要のない情報は記憶しません。脳は生命に必要な情報のみを選んで記憶する様に設計されています。脳に入ってきた情報が必要かどうかを判断する基準が、上述した「感情」と「意識」です。
要するに、上述した二つの条件をうまく利用し、脳に記憶を定着させることが脳の性質に則した科学的勉強法と言えるのです。
しかしながら、学生の皆さんが定期テストや受験で必要とする情報は、人間の生命にとって必要であるかと言えば残念ながらそうではありません。科目で言えば日本史、世界史、中学高校数学、古典漢文など、人間が生命を維持するためには必要ないものです。にも関わらず、学生の皆さんはこのような知識を記憶しなければなりません。これは前に述べた「脳の性質」に反した行為と言えます。
要するに、何が言いたいかというと、脳が記憶するための二つの条件、「感情」と「意識」を利用し、あたかもその知識が生命にとって重要なものであると脳に勘違いさせてしまうのです。つまり、「脳をだまして記憶させる」というわけです。
学校の成績に差が出るのは、脳をうまくだますことが出来る人とそうでない人の差です。頭が良いとか悪いとかいう非科学的理由ではありません。単に脳に記憶させるのが上手なだけです。これが出来る人は、意識的だろうと無意識だろうと記憶の原理が理解出来ている人に他なりません。これをこれからは「科学的記憶法」と呼びます。
科学が解明した脳の力を利用することで、いかに効率良く勉強出来るのかを体感できるでしょう。